ここでは、実用的技術として<エイコーン・マジック>を紹介する。原理的には<タリズマン>と同じだが、イメージの想起にフィクションを利用するのを特徴としている。
尚、ここで言う<エイコーン>とは、ギリシア語で言うところの「像」の意味で使用している言葉であり、キリスト教で言うところの「イコン」とは無関係の技術なのであしからず。
エイコーン・マジックとはある特定の<像>を元にイメージを膨らませ、その像から受ける印象などの<精神的エネルギー>を呼び起こしたり操作したりする技術である。
ここで利用される<像>は、幻想自警団においては主に<アニメ>の<キャラクター>が利用される。
簡単に原理を解説すると、ある特定のアニメキャラの性格や容姿から得られる精神的、心理的な情動をその<像>、すなわち<エイコーン>を観賞することによって得るというもので、結果的にそのキャラクターへの思い入れが強ければ強いほど、強力な情動を術者の精神内部に喚起できる。また、その像をイメージし、ビジュアライズ(視覚化)すれば、その<召喚>も可能となる。その際に、そのアニメで使用された楽曲などを流せば、その楽曲に適応したシーンを喚起し、その幻想空間内で召喚したアニメキャラと戯れたり、冒険を共にしたりすることもできるようになる。ただし、それを実現するにはそれなりのアニメ作品への没入の能力が求められるのは言うまでもない。ここでもそのキャラクターへの思い入れなどの点で術者の能力差が生まれることになる。
以下、実際の<エイコーン>の実践方法である。
キャラクターの<像>を入手し、それを見詰められる環境を作る。これは平面でも立体でも構わないが、立体の方がよりイメージを明確化できるかもしれない。ただし、イメージと異なる物品を使うと召喚するイメージを劣化させる可能性もあるので、できる限り美しく製作されたものを利用すること。
次に、そのキャラクターのイメージを明確化する。例えば、一例としてあるアニメのキャラクターを明確化すると、「シズル:愛と美と情念の女神。同性愛の守護神。象徴は蛇。蛇の名はシズヒメ。上方の言葉を操る」などとなる。この明確化が客観的に行われた場合、そのアニメを離れて独自のイメージとしてそのキャラクターを幻想空間に召喚することもできる。このイメージは言葉である必要は無く、シチュエーションを想起することで行っても良い。
そして、そのイメージが視覚化されたなら、そのまま自分の設定した幻想空間にそのキャラクターを召喚し、対話を楽しんだり、冒険を始めると良い。自己制御が失敗するまではその幻想空間の中でそのアニメキャラと共に美しい時間を過ごすことができるだろう。
最後に、目覚めたら<鎮魂の十拍>を行い、幻想空間を消去してから日常に戻る。
以上である。