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幻想自警団シジルマジック(短編小説)
ある秘技伝授儀式の記録
ある日、幻想自警団マスターから新規参入者への秘技の伝授が行われた。
「新規参入者F(仮名)よ、そなたに幻想自警団の秘技である<シジル>を授ける」
「ははっ!」
<シジル>とは、線描で描かれた護符のようなものであり、それを眺めることによって術者はそのシジルに込められた精神的エナジーを我が物とし、更にはこれを操ることで術者は常に自分の精神状態をそのシジルの効果によって制御することができるのだ。
「ならば畏れと礼を持ってこれを受け取るべし」
そう言うと、マスターは分厚い封筒を差し出した。
「はは!」
新規参入者はそれをうやうやしく受け取り、一礼した。
彼は、封筒を受け取った瞬間に、そこに分厚い紙の束を持ったような重さと感触を得て、恐縮した。
これが秘技の重さなのか。この中にシジルマジックの秘技を記した文書が詰め込まれているのか。そう思うと彼の胸は高鳴り、その興奮を抑え切れずに思わず感歎の溜息をついた。
だがその様子を見て取ったマスターは、すかさず厳格な面持ちで秘技伝授における<鉄の誓い>を確認した。
「決して口外してはならぬ。誓いを破る者には速やかなる死が待っていることを忘れてはならぬ!」
そうだ、これは秘技の伝授なのだ。誓いを破れば死が待っている。彼は己の興奮を厳格な誓いの重みで押し潰しながら答えた。
「は、決して口外致しません、わが身命を持って誓います!」
その言葉に、マスターは満足気な微笑を浮かべ、強く、そして静かに、その封筒の中を見るようにと指示をした。
「では開封し、その秘技を確認せよ」
「はは!」
新規参入者はおごそかに封筒を開け、震える手で中から秘伝の書を取り出した。そこにあったものはまさに彼の想像を超越した一冊の文書であった。黒い表紙には金色でタイトルが刻印され、その書籍を開くと中にはびっしりとあらゆるシジルの解説が書き記されていた。そうだ、これは紛れもない……
「……漢和辞典」
「決して口外するでないぞ」
「あ、はい」
彼は忘れていたのだ。これが<幻想自警団>の秘技伝授だったことを……。
解説
意味がわからない方、あなたは正常ですから気にしないで下さい。