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幻想自警団通信文Z

榎庵将棋

榎庵将棋

<榎庵(えのきあん)>とは福岡県太宰府にある「菅原道真(すがわらのみちざね)」の配所(配流、流された場所のこと)である<榎寺(現在の榎社)>のことを指し、これを幻想自警団では<榎庵(えのきあん)>と呼んでいるものである。

菅原道真は学問の神であるとされているが、実際には政敵「藤原時平(ふじわらのときひら)」の陰謀により謀殺された悲劇の忠臣である。そのため菅原道真の死後平安京はその祟りに見舞われ、人々は菅原道真を神として祭ることでそれを鎮めようとした。生前は善政をしいた菅原道真だったが、残念ながら<神>となった後は祟りを振りかける<祟り神>となってしまったのである。

そこで平安京の<検非違使(けびいし。今で言う警察官のようなもの)>達はその祟りを鎮めるためにその身命を賭して、菅原道真が率いる<神の軍団>に立ち向かい、京の治安を護ろうと、人の身でありながら戦い、奮戦した。

<榎庵将棋>とは、上記のような歴史的背景から産まれた独特なルールの将棋である。そのため駒の動きや意味が現代の将棋とはかなり異なっている。一番の違いは数札を使うことであるが、幻想自警団ではその数札に日本で言うところの「トランプ」を使用し、それに独自の解釈を加えている。

ちなみに、ここで言う<将棋>とは、そもそも<象戯>と表され、神々の象徴を木の札で表したものを魔を封じる格子模様(道満・どうまんと呼ばれるいわゆる九字の印)の上で動かす古代の占いが大衆化し、遊戯に転じたものを指している。ゆえにこの術式の結果によって、占いを行うこともできるだろう。

最後に、上記内容は<幻想自警団翰林院(げんそうじけいだんかんりんいん)>に伝えられている<伝説>なのであるが、それが史実であるかどうかは確認が取れていない。興味の有る人間は自分で調べることをお勧めする。ただし、一部事実と違う部分があっても、それを<幻想>として楽しむことを忘れてはならない。

準備

*準備するもの*

トランプ一式、将棋の駒(裏の文字が朱で書いてあるもの)、将棋盤。

人数

*必要な人数*

一人。

術式

*手順*

1:将棋盤の上部を北とし、東西南北を決める。方位のそれぞれにはトランプのマークを対応させる。以下、その一覧。

  • 北=スペード
  • 東=ハート
  • 南=クラブ
  • 西=ダイヤ

東西南北には四聖獣が対応している。その対応は以下の通り。

  • 北=玄武
  • 東=青竜
  • 南=朱雀
  • 西=白虎

結果としてこの術式を行う場合は以下の照応が成り立つことになる

  • 北=玄武=スペード
  • 東=青竜=ハート
  • 南=朱雀=クラブ
  • 西=白虎=ダイヤ

2:駒の並べ方は以下の通り。

盤の中心に王将を置く。これが平安京の中心にいる<天皇>である。次に、その周囲八方に歩を置く。これが<検非違使>である。それから今度は菅原道真配下の駒を置いていく。北方の中心の玄武の位置(つまり盤の上辺の真中)と南方の中心の朱雀の位置(同じく下辺の真中)に<成り角(裏返した角)>を下向きに(駒の頭を下にして)置き、東方と西方の中心、つまり青竜と白虎の位置(左右両辺の真中)には<成り飛車(裏返した飛車)>をやはり下向きに配置する。最後に右上(いわゆる1−1。盤の右上角)に<玉将(ぎょくしょう)>を頭を下に向けて置く。この<玉将>が<菅原道真>である。

上記配置をわかりやすく説明すると以下のようになる。

987654321
□□□□角□□□玉1
□□□□□□□□□2
□□□□□□□□□3
□□□歩歩歩□□□4
飛□□歩王歩□□飛5
□□□歩歩歩□□□6
□□□□□□□□□7
□□□□□□□□□8
□□□□角□□□□9

これで準備は終了である。

註:菅原道真を裏鬼門(9-9)に置いても良い。その場合は菅原道真が天皇を追いかける際に、上に向かって進んでいくことになる。

榎庵将棋術式(榎庵将棋のルール)

プレイヤーは<天皇>及び<検非違使>となり、道真が気力を失う<観音寺の鐘の音>が鳴るまでの間、道真の軍団から平安京を護ることを目的とする。

1:初めにトランプを良く切り、山にして伏せる。

2:次に、術式の開始を宣言する。

開始の言葉(以下が天から響いてくることを想像しながら発声する)

「曇りなき 清き心は神ぞ知る 人こそしらめ おのが心を」

3:戦闘を開始する。

トランプの山の一番上から一枚めくり、出た数とマークを見る。以下の条件に適合するカードであればその指示に従う。

*皇居カード(コートカード)。いわゆるJ、Q、K、のカードが出た場合*

マークに対応する辺(方位)の成り角、または成り飛車を一気に反対側の辺に向かって進める(つまり普通の将棋の飛車と同じ動き)。障害物か反対側の辺にぶつかったらそこでストップ。進行方向に駒の頭を向けて(つまりとがった方を向けて)置く。次回は逆の方向に動く(つまり行きつ戻りつする)。飛車、角が動いた先に検非違使(歩)や天皇(王将)の駒があればそれを取って止まる。この時点で王将を取られたらプレイヤーの負け。動かすべき駒(飛車、角)がすでに検非違使に倒されていた場合は対応するカードが出ても動く駒が無いのでそのままターン終了。出たカードがKであった場合は前記行動(飛車、角の動き)と同時に菅原道真(玉将)が天皇(王将)に向かって一マス進む。菅原道真の進行方向は常に王将に向かうが、縦位置、横位置がずれている場合は必ず王将に向かって斜めに進む。その際に障害物(赤い文字の駒)がある場合は<見合い>で動けずターン終了。玉将や飛車、角に歩が取られたら歩を盤の外へ出す。もちろん天皇(王将)が取られたらプレイヤーの負けでゲーム終了。

*ポイント*

菅原道真(玉将)は、配下のコマが全て無くなるまでは無敵。盤上に敵の駒(赤い文字の駒)があるうちは玉将である菅原道真を取ることはできないので注意せよ。まずは配下の神々から倒すべし。

4:上記皇居カード以外が出た場合。

10(マーク不問)が出た場合。

四方の成り角、成り飛車が全て同時に中央に向かって一マス進む。駒は進行方向に駒の頭を向けて置く。障害物がある場合や進むとお互いの駒が重なる場合は<見合い>で動かず。もちろんそれで王将が取られたらプレイヤーの負け。歩が取られたら歩を盤外へ取り除く。次に飛車角が動く方向は一律に逆方向(つまり元いた方向)へ向かう。その際も障害物があったり駒が重なる場合は見合いとなる。そもそも中央にいた場合はその直前に動いた方向の逆(元いた方向)に向かう。

5:上記以外のカード(1〜9の数カード)が出た場合。

そのカードを持ってもう一枚引く。二枚目に引いたカードが上記1〜4のルールに適合するものならそれを実行する。それ以外の場合(つまり1〜9の数カードが二枚続けて出た場合)はそれが以下の組み合わせ以外なら6へ、以下の組み合わせならそのまま<見合い>となって何も起こらず菅原道真のターン終了。

見合いの組み合わせ

6:1〜5の条件に合致せず、数札が二枚続けて出た場合

神の電撃が地に落ちる。落ちる位置は、出たカードのマークが方位(辺)に対応し、数字はマス目の位置に対応する。例えば「スペード4とハート9」だった場合は右から4番目、上から9番目のマスに神の電撃がほとばしり、雷落する。「クラブ2とダイヤ5」なら右から2番目と上から5番目のマスに落雷する。落ちた場所に検非違使や天皇がいた場合はその駒は一撃で死ぬ。もちろん天皇が死んだら負けである。落雷した後には成り駒(余っている駒を使う。歩の裏である「と金」以外の駒で裏の赤い駒なら種類問わず)が焔(ほむら)となって立ち上る(つまり落雷したマスに「と金」以外の裏が赤い駒を置く)。これを消火しないとやはり菅原道真は無敵のままである。この焔を消すにはやはり歩か王将でそれを取らなければならない。ただし、この焔は動かないので、放っておいても攻撃はされない。また、動く駒(飛車、角)がこの焔にぶつかるとこれが障害物となり、その一つ前のマスで動きを止める。

逆に菅原道真の仲間の駒の上に落雷した場合(飛車や角、焔、玉将のある場所に落雷した場合)はその周囲八方に火花が飛び散り(この場合は盤外に余っている歩を裏返した「と金」を落雷したマスの周囲八方に置く)、飛び火した「と金」が焔として立ち上る。その際歩や王将がその焔に巻き込まれればもちろん即死である。この「と金」の焔は燃えた後すぐに消える(つまり周囲八方を焼いた後はすぐに「と金」を取り除く。落雷の一瞬だけその周囲にあるものを焼いて消えるということ。「と金」は敵の駒に落雷する度に何度でもその周囲を焼く)。ここでももちろん天皇が死ねばゲーム終了である。

尚、プレイを続ける中で続けざまに雷が落ち続けて、焔となる裏が赤い駒が足りなくなった場合は、その後落雷のカードが出ても<不発>となって雷は落ちない(つまり落雷の限度数は盤外にある歩以外の駒の数までだということ)。ただし、一度消した焔(「と金」以外)が盤外にあれば、それを再び焔として復活させる(つまり敵の駒を取ったものがあればそれを焔として再び盤の上に置く。ただし成り角と成り飛車は復活しない。それ以外の駒は盤外にある限り落雷の度に盤上に戻る)。

以上で菅原道真のターンは終了。

7:人間側(プレイヤー)のターン

歩か王将をひとつ動かす(歩は上下左右にひとマスだけ動かせる。王将は上下左右斜めにひとマスだけ動かせる)。敵の赤い駒は重なれば取ることができる。しかし、敵の玉将は赤い駒を全て排除した後で無いと取ることができない。それまで菅原道真は無敵である。

8:決着

決着がつくにはいくつか方法がある。以下がその一覧である。

上記条件を満たしたら終了となる。

9:終わりの言葉

遥か大宰府から観音寺の鐘の音が聞えて来ることを想像しながら、同時に天から以下の和歌が響いてくることを想像してこれを詠む。

「君(天皇)が住む 宿(皇居)の梢(こずえ)をゆくゆくも かくるるまでに かえり見しかな」

そう言って菅原道真は去っていく。

ちなみに菅原道真はゲーム中なぜか四回しか動かない。もしかすると道真には叛意(はんい)など無く、わが身の潔白を天皇に伝えたかっただけなのかもしれない…。

以上で術式全て終了。以後、占いを行う場合は<占いの診断方法>を参照せよ。

2005/5/17

補足情報

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