占いと魔法とオタク
幻想自警団通信文Z

オカルティストの四つの危険

およそ好事家(こうずか)というものは、そもそもが<非常識>である。また、それを善しとして生きている。だが、ことオカルトの世界においてはそうした<非常識>は場合によっては命を落とす危険をはらむ危うい気質となってしまう。

ここでオカルティストの陥りやすい代表的な四つの危険をピックアップしておく。自分の身に照らし合わせて危険な状態になっていないか、常にチェックすることを忘れないようにしていただきたい。

盲信、および現代科学の否定によるオカルト原理主義

オカルトの世界の魅力はそれが<非科学>であることだ。およそオカルトと言われるものが全て科学的に説明できるものならば、それは好事家たちの欲望を刺激しない。しかしながらそこに<現象>が起こるのであれば、必ず何かが<科学>の領域で起こっている。もしその<科学>が性質(たち)の悪い<トリック>であった場合、それに<盲信>、あるいは<現代科学の否定>の立場で接するなら、その人物は何の抵抗もできずに<騙されて>しまうだろう。

オカルトに関わる際には<科学的>でなければならない。トリックを見破れない人間は本当のオカルトを選別できない。テレビで放送されている行方不明者探索番組の自称超能力者たちを<娯楽>として見るのは構わないが<盲信>してはならない。

オカルトに接し、それを楽しみたいなら<唯物論>を信じよ。でなければ安全な手品を見て楽しむまでにしておいた方が良い。

薬物は命を落とす媚薬

オカルトの世界において<ドラッグ>ほど厄介なものはない。古来より人類は<ドラッグ>の使用によって神との交流を行い、更には<幻視>を行っていた。だがその<神秘的体験>は結局<ドラッグの効果>でしかない。宗教的恍惚感にひたり、世界の全てを掌握したような気分になったところでそれは所詮<薬物の効果>でしかない。

世の中の<ドラッグ・レポート>を読むとどれも皆薬物に対して肯定的な意見が書かれている。しかしこれにはトリックがある。すなわち、<本物のジャンキー>はレポートが書けるような場所にはいないし、その能力も失っている(脳障害を起こしている)。ドラッグに対して肯定的な意見ばかりが世に氾濫するのは<生き残った人間>だけがそれを執筆しているからである。ドラッグの使用を後悔したときには既に刑務所か、精神病院か、土の下だ。そうしたドラッグの<上澄み>だけを見てドラッグを肯定するのは間違っている。

もしあなたがオカルトを楽しみたいなら<ドラッグ>は厳禁である。なぜならそれは<不幸な幻想>そして<死>への片道切符であるからだ(追記も参照せよ)。

古代文明への過度の期待

オカルトの世界で一般的な感覚として存在しているのが古代文明への過度の期待、あるいは信頼である。ヨーロッパの人々が古代エジプトに対して異常な期待と興奮を覚えていたように、我々もアトランティスやムー、邪馬台国などに何か現代以上の神秘的なテクノロジーを感じることがある。

しかしながら、古代文明や過去の科学者たちは現代につながるバトンを渡した人間であり、現代人はそのバトンを受け継いだ上に進歩を重ねている人間なのである。そのバトンの流れを断ち切って、過去の技術に傾倒するのは間違っている。

古代の占星術は天変地異を予測する、いわば<カレンダー>であり、その観測の上に今の天文学が構築されているのである。錬金術は<化学>というものの先駆けである。過去の文明を現代人の憧れをもって覗いてはならない。過去に作られたものは、過去の技術なのである。我々にできることはただ、その技術を修正、発展させることだけだ。過去の技術を現代科学の否定に使うなど、愚の骨頂であると心得よ。

カルト(セクト)への誘い

オカルトの世界で最も問題なのは信頼にたる情報を持った人間が少ないということだ。その為それらの情報を持っていそうな団体なり人物なりに、好事家は近づかざるを得なくなる。しかし、そこに待っているのはまず間違い無く<カルト(セクト)>の<資本主義>である。

私もいくつかの<カルト>や<セミナー商法>の手口を知っているが、それらはいずれも悪辣極まりない。フランスにおいては本家のキリスト教会がキリスト教的カルト(現地ではセクトと言う)を除名することでその組織を事実上潰して行くことができるが、日本では多神教の文化のためか、上からそれをつぶす事ができない。その為我々日本の好事家はそれらの団体には一定の距離をおくことでしか、自衛の方法が無いのである。

現代においてはオカルトの情報は努力すれば書籍の形で入手できる。書籍を読むだけならまだ安全だが、その後にうかつに活動内容が不明な宗教団体や、あやしげな器具や薬物を販売する組織などに近づいてはならない。いわゆる「君子危うきに近寄らず」である。

弱みや好奇心につけ込まれないように十分に警戒せよ。

2005/2/13

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